2740年01月01日

第I光:『覚醒』 第八章 リーヌを渡って銀河を抜けて - I


-----------------------------------------------------------------------------------
 西暦2809年9月13日:

 ちょっと頭が痛い。酒量が越したかもしれない。リンダに進められるままに杯を空にしていってしまったのが問題だろう。気を付けなくては。二日酔いの副長なんて、あまり格好の良いものではない。

 リーヌに飛び込んでから丸一日が経過した。暫定的な三交代制が取り入れられたので、それぞれのチームの自由時間においては盛大な宴会が行われた。私は第三班の最高責任者であることを命じられた。艦長と過ごせる時間が少なくなるのは残念だが、致し方ない。

 艦長やキリオさんがいないこともあって、宴会の時間を迎えるにあたっては非常な気後れを覚えもしたが、いざ始まってみると、杞憂に過ぎなかったことが分かった。みんな、とても気持ちの良い人達だ。リンダやシャリーと言った艦橋組の人達とは面識があったが、他の人達とは全くと言って良いほど、面識なんてありはしなかったのに。

 ともあれ、大変に楽しい一時だった。ただ、個人的には多少、常軌を逸脱した宴会芸の数々は引っ掛かった。…全く楽しくなかったワケではないが。

 第一班のフローラさんから、艦長が終始モテモテだったと言う話を聞いた。

 正直、かなり複雑である。

 そんな艦長はここ一日、ミランダに付きっきりだ。一体、艦長室で何を行っているのだろう。…まあ、リンダやヒムラさんが一緒だと聞くし、問題は無いんだろうけど。

 私ってこんな人間だったのかな…。

 嫌だな。…鬱だ。

ソフィ・ムラサメの日記より
-----------------------------------------------------------------------------------


「頭が割れそうだ――」
 艦長席上で、第二班の責任者であるヒムラ・キリオは力無く呟いた。
「幾らなんでも呑み過ぎですよ――」
 操舵士席のアイーシャ・ロシュフォルが冷たい言葉を返す。彼女はアルコールの類を一切、摂らない人間なのである。宗教上の理由らしいが、キリオはそこまで詳しくは知らなかった。
「お酒は人間を惑わします。呑むな、とは言いませんけど、酒量は弁(わきま)えないといけないですよ、主任」
「肝に銘じておきます――」
 激しい二日酔いの直後のみ、受け入れられる彼女の言葉ではある。
「それじゃ、時間なので私は第二艦橋へ行きますね」
 個人の端末各種をデイバックに詰めながら、アイーシャが言ってきた。
「あっ、そうか――キムに宜しくな」
「はい」
 彼女を始め、数人が予備操舵士としての講義と訓練を行う予定になっていることをキリオは思い出すことが出来た。教官はキム・レクソール、つまり現段階における操舵長である。人に教えるのは得意ではない、そもそも自分だって教えられるほど熟練していない――と駄々をコネたキムであったが、親切なムラサメ副長から様々なプログラム教材――宇宙軍純正のものではあったが――を受けとって、渋渋ながら引き受けたという経緯(いきさつ)があった。
 アイーシャが鼻歌を口ずさみながら艦橋を後にすると、ナナ・マネーシーがヤン・メイリンとニノマエ・ミコトを相手取ってレクチャーを行っている声がキリオの耳に飛び込んできた。ナナが手にしているのもやはり、ソフィが用意した教本である。オペレータを艦橋から外すわけにも行かず、彼女は通常の作業と平行しながら、数人にレクチャーを行っているのである。
『なんとかしてやりたいがなあ』
 これでも、かなり悩んだシフト分散ではあったのだ。暫定的ではあるが、現段階においてはこれ以上、考えられないほどに。
「艦橋要員は少なくとも、数人は予備員が必要だ」
 クリストファ・アレンの言葉だったか。

 機関室等に、どうしても男手が必要なこともあって、艦橋要員、並びに管制室要員はどうしても女性の中から絞らなくてはならない現状があった。付け加えれば電算室にも人員は不可欠ではある。
「課題は山積みだ――」
 弱音をボソリと呟きながらもしかし、『余裕』がある上で発生している悩みでもあるので、それほど深刻なものとは感じていない。最悪、リーヌに飛び込む直前に撃沈されていた可能性だってあるのだから。
「――主任もそろそろお時間じゃないですか?」
 ナナ・マネーシーが自分の爪時計を示しながら、突然声を投げてきた。
「えっ? もう??」
 慌てて艦長席の端末の時間表示に目をやると、確かにその通りだった。
「――いけねっ」
 背もたれに引っ掛けておいたブルゾンを乱暴に着込む。
「じゃあナナ、ブリッジを頼む。何かあったら、直ぐに連絡してくれ。真下の会議室にいるからさ」
「了解です」
 遅刻とまでは行かないが、今が正にその時間。キリオは、ブルゾンの襟を正しながら、エレベータに乗り込んだ。

   ・
   ・
   ・

 『会議』は予定より五分、遅れて開始された。本来は休息時間であるクリストファ・アレンとソフィ・ムラサメ、リンダ・フュッセル等は、さすがに疲労の色を引きずっていた。
「遅れてすみません」
数分とは言え、遅刻してしまったことを心から詫びながらキリオも空いている席へと着いた。
「別に構わんよ」
 クリストファ・アレンとソフィ・ムラサメは既に正規の軍服をその身に纏ってはいなかった。クリスは整備服を、ソフィは皆と同じアルティマ乗組員限定の軍服をラフに着込んでいた。どちらも、支給されたばかりの代物だ。言うまでもなく、リンダ・フュッセルはいつもと変わらない、白衣姿だった。
「――さて、忙しいところを申し訳ない」
 クリスが咳払いを行いながら、その腕を円卓上で組み上げた。
「今後――リーヌ航行中に何を行うべきか、それについて話がしたかったんだ」
 ソフィ、キリオ、リンダが無言で頷いた。
「差し当たって――先程副長から軽く、聞いたんだが――」
 クリストファは、ソフィからキリオにその目を向けた。
「妊婦さんが艦内にいる――と言うのは――まあ、事実なんだろうけど――詳しく教えてくれないか?」
 手の平を上に向けながら、クリスはキリオに向けた。どこか、苦笑の念を否定できないでいる艦長だった。
「ああ、そうなんだ――なかなか説明できなかったことはお詫びする――」
「構わない。別に、意図的に隠していたわけでもないだろうからね」
 キリオを安心させるために、クリスはそんな軽口を叩いた。
「助かる――ええと、彼女に関してはリンダが説明した方が良いと思う」
「だね」
 水を向けられたリンダが、頬杖を解除した。
「ええと、お名前はユキノさんと言うんだ。マエダ・イチローの奥さんだ。で、子供が一人――これはマコト君と言う」
 クリストファ・アレンの眉毛が上がった。
「子供もいるのか――」
「うん。えっと、二歳になったのかな――可愛らしい、良い子だよ」
「なるほど――それで、そんな噂のユキノさんは妊娠何ヶ月なのかね?」
 もしかして、ユキと言うのは以前の『団子』の際に挙がった名前だったか――少なくとも、どこかで聞いたことのある響きではある。
「妊娠七ヶ月」
「ンガ――」
 リンダのその発言を瞬時に理解するのは不可能だった。自分の顎が外れ、卓上に落ちてしまっているのではないか、とすらクリスは感じた。
「――フリーズしちゃった? ソフィと同じだ」
 リンダが同情を示す表情を浮かべながら、それでも軽い口調で言った。
「仕方ありませんよ――ソレぐらい、ショックなんだもの」
 ソフィが苦笑を浮かべながら、答える。だが、そんな艦長の立ち直りは部下のそれよりも早かった。一度、二度、首を回してから、その口を開く。
「当然、艦内で出産ということになるわけですなあ――」
 本人としては、遠い目で精々に深刻な口調で述べたつもりだったが。
「当たり前じゃん」
 リンダ・フュッセルは簡単に跳ね返してくる。
「――その、なんだ。僕は詳しくはないんだが――出産に際してって結構、何というか――その――」
 全く意味を為さないジェスチャーを混ぜながら、クリスはどうにか自分の言葉を紡ごうとはしている。
「ああ、設備は全く問題ない。それと、アタシが彼女の出産も含めて全てバックアップするから大丈夫」
 リンダは狼狽しきりのクリスを安心させる為に説明を行ったつもりだったが、彼は生憎と全く、心安らかになれていないようだ。何故。
「君が――??」
 ぎこちなく首を傾けながら、クリスはその一言だけを返した。
「うん。何か問題でも?」
 同じ角度で首を傾げたリンダが応じる。
「――詳しくは知らないんだけど――結構、重要な…イベントとは違うの…か?」
 助け船を求めて、クリスは左側のソフィにその首を傾けたまま、水を向けた。
「まあ、大丈夫だと思いますよ――生まれるべくして生まれるわけですから」
 あまり助けにならない言葉だった。
「そうなんだ?」
 まあ、当の女性陣がこの様に言うのであれば、問題は無いのだろう。
「そっか、ともかく――なんだ、その――メデタイことじゃないか」
 強引に結論付けて、クリスはようやくその首を元の角度に戻した。見ればキリオも微妙な表情を浮かべていた。彼もクリスと同じ心境に立っているのかもしれない。ただ、自分と比べれば前の前よりこの話は耳にしていたはずだから、心の準備を行う期間は存分にあったのだろう。
「そらそーだ。これ以上のコトブキは無いよ。女体を侮ってはいかんよ、男性諸君」
 リンダのその口調は、だらしない男性陣を笑っているかの様な響きを含んでいた。
「……まあ、この件は取り敢えずお預けだ――ただ、一度は会っておきたいな、そのユキノさんと、お子さんにはね」
 クッションの効いている椅子に座り直しながら、クリスは言った。この上なく重要な問題ではあるが、いつまでもこの問題に掛かり切る訳にもいかないのである。
「うん。計らっておこう。今は就寝していると思うんだけど」
 リンダが笑顔を浮かべながら言った。
「ああ、向こう様の都合が良い時でいいさ。さて――と」
 答えながら、クリスはキリオにその両目を向けた。
「――キリオ、君に、いや君達にお願いがあるんだけど」
 口元は笑いながら、だがそこそこ真剣な表情のクリストファ・アレン。
「なんかイヤーンな予感がするなあ、その前フリは――」

   ・
   ・
   ・

 果たして、そのキリオの予感は的中した。

「随分な注文だな――」
 一頻り、話を聞いた後でキリオは苦笑いを浮かべながら答えたものだった。
「でも、相手が『君達』だから、だよ。どう? 絶対に無理なのかな??」
 クリスのその言葉には明らかに挑発の色が込められている。
「分かったよ。やってみるさ。どの道、時間はタップリとあるしなあ」
 半ば、自暴自棄となっている様子を仄(ほの)めかしながら、キリオは椅子に寄り掛かって見せた。
「すまん。でも、期待している――」
 キリオに頭を下げながら、クリスは言葉を続けた。
「注文が多くって本当に申し訳ない」
 そんなクリスに対して、キリオは腕を頭の後ろで組んだ。
「頭なんて下げないでくれ。困る。俺達は俺達の意志で、この船に乗っているんだ」
 比較的神妙な面持ちを維持しながら、キリオが言葉を繋げた。
「で、スケジュールはどうする? 出来れば、全部俺に組ませて欲しいんだけど――ブリッジや何やらで研修中の連中もいるが?」
 クリスはキリオのその言葉を受けて、顎に手を当てて黙考した。
「――そっちを優先しよう。時間の空いている者を研修に回すように――して貰えると有り難いが。一日一時間でも構わない」
 事実、リーヌ航行中の現在にあってはブリッジに人員は必要無い位かもしれない――と、クリスはここ一日、感じてはいた。軍艦の乗員としてよりも、技師としての彼等の働きの方に天秤を傾けるべき時だろう。
「それは全く問題無い。そんな時間ぐらいなら簡単に捻り出せるさ――それよりさ」
 キリオが組んでいた腕を卓上に乗せた。
「お前達に大分、負担が掛かってしまわないか――?」
 クリスとソフィを交互に見遣りながらの言葉だった。
「お気遣いには感謝するが、大丈夫だよ。前任艦の時に比べれば、リーヌ航行中のブリッジを預かるだなんて、大した労苦では断じて無い」
 クリストファのその言葉の一句一句にソフィが頷きを加える。そんな彼等の言が真実であるとはとても思えなかった。
「お互いに頑張るしかねえか」
「そう言うことだ」
 会議室を、四人の笑い声が満たした。

「さて、それじゃ、その件はキリオに任せるとして――後は幾つか要望が上がってきていたんだっけ?」
 クリスはソフィに視線を固定したまま、言った。
「はい。ええと、艦内に『お店』を開きたいと言うのが二件、それと第二格納庫のグラウンド化、そして共同浴場のペイント希望が上がってきておりますね」
 なんじゃそりゃ――と、クリスは思わず口にしてしまった。
「あー、グラウンドが欲しい、って意見は前々からあったなあ、そう言えば」
 キリオが額に手を当てて、笑い声を立てる。
「グラウンドねえ……何をするつもりなんだ?」
 笑い続けているキリオを無視して、クリスはソフィに尋ねてみた。
「さあ…? そこまでは記入されていませんでしたけど」
「そもそも、どうなんだ? グラウンドにする土なんて余剰分、あるのか?」
 クリスのこの発言はもっともで、この【アルティマ】において、土は貴重品だ。もっとも、アルティマに限らないだろうが。
「あ、それは菜園用のがタップリとあるから問題は無いよ」
 リンダが口を挟んできた。
「菜園――そんなモノまであるのか」
 クリスは裏返った声を絞り出した。無論、軍がそんな不要な設備を設けるはずがない。彼等の独断によるものだろう、と言う推測は容易に付いた。
「勿論、当初の予定にはなかったんだけど――土イジリが好きで好きでたまらないヤツが何人かいるんだ」
「まあ、可能なら良いんじゃない? 艦内が泥まみれになるのだけを避けてくれれば良いよ、自由にしちゃって――と、個人的には思うが」
 最後の部分で慌てて、他の三人に弁明してみせる。
「はははは、いやいや、お前さんが『長』なんだから、そんなに気を遣わなくても良いよ、こんなことで」
 クリスのそんな逡巡を見破ったキリオが再度、笑い声を上げてみせる。
「うん、良いんじゃないの。たまには運動したくなるだろうし」
 リンダがそう言うに及んで、キリオは更に彼女の発言にも絡んだ。
「『たまには』だろ? ダイエットを急に――」
 リンダ・フュッセルは無言で、テーブル下のキリオの向こう臑(ずね)をヒールの先端で思い切り、蹴飛ばした。
「うごっ――」
 悶絶しているキリオに同情の視線を投げた後、左隣のソフィにクリスは一つ、頷いた。
「では、艦長承認と言うことで提案者に通知しておきますね」
 キリオの悶絶を痛々しい目で眺めていたソフィはだが、直ぐに自分を取り戻してそう応じるのだった。
「オッケ――ところで、最初の『店』ってのは何をやる気なんだ?」
 キリオはまだ悶絶している。
「ええと――『一杯呑み屋』と『軽喫茶店』だそうです」
 手元の資料を捲りながら、ソフィが言う。
「――そりゃまた、渋い趣味だな…」
 これで『お化け屋敷』が加われば、学園祭だな、等とクリスは考えた。
「呑み屋はキムがやる、って言っていた気がする。軽喫茶は多分、エリじゃないかな」
 未だに悶絶しているキリオを爪先で更に突きながらリンダが会話に加わってきた。
「ははあ、それで彼は佐世保の時に何やらゴチャゴチャとやっていた訳だ」
 得心の行ったクリスが右手拳を左手の平に打ち付けた。
「うん。キムはああ言うの、好きなんだよ。エリはエリで、コーヒーや紅茶に物凄くうるさくって」
 キム・レクソールとエリザ・ヤマナカの両名はブリッジ要員であることもあり、その人と為りは知っている。彼等なら暴走することも無いだろう――多分。
「まあ、『本業』に差し障りが出ない程度で有れば良し、とするか」
 偉そうなことを言うクリスではあるが、その実、キムが経営するであろう『一杯呑み屋』にはかなりの興味を惹かれている。
「嬉しそうですね、艦長」
 半ば、冷やかし気味にソフィが言ってきた。少し前までは考えられないことだ。堅物だった彼女も、このアルティマの環境に触れて、少しずつ変化してきているのかもしれない。それは歓迎すべきことのようにクリスには思えた。
「ん――まぁね」
「――キムの炙(あぶ)ってくれる干物が美味いんだよ」
 いつの間にやら立ち直っているキリオがそんな発言を行ってきた。
「干物って言うと――クサヤとか?」
 顔をしかめながら、クリスが宣った。
「クサヤ――好きなのか?」
 キリオも同じような表情を浮かべている。
「いや、小笠原で一度、食わされたが――あまり好きじゃないな。臭いが強すぎる」
 自らの鼻を摘んで見せながら、クリスは主張した。
「同感。どうにもあれは苦手だ。ともかく、スルメだな。あとはカワハギの味醂干しとかが最高だ」
 クリスとキリオは同時に頷いた。
「「承認だな」」

 酒呑みの執念、いや、妄執と言うべきか。

 息の合っているそんな一組を眺めて、もう一組は苦笑いを同時に浮かべるのだった。

「で、なんだ。最後は浴場のペイントか――」
「はい。ご丁寧に、イメージイラストまで添付してくれてました」
 笑いながら、ソフィがプリントした紙をクリスに手元に押し遣った。
「ふうん。やっぱり富士か――」
 そんな紙には、紛う方の無い富士山の全体像が描かれていた。
「個人的には歓迎だな――ちょっと殺風景だったしな。やはり、本業が疎かにならない程度だったら構わないんじゃないかな」
 その紙をキリオに回しながらクリスは言った。
「うん、俺も良いと思う。速乾性のペイントを使用すれば日数も掛からないだろうし」
 ペイント作業が得意な部下の顔を幾つか脳裏に浮かべながら、キリオが答える。
「デザインに関しては、艦内から色々な意見を採り入れると面白いんじゃないのかな?」
 軽い頬杖を突いていたクリスが何の気も無しに行った発言だったのだが。
「それ、良い考えだな」
 キリオが体を乗り出してきた。
「そう言う企画を好きな奴も多い。やってみる価値は充分にあるな」
 リンダもリンダで大きく頷いてみせる。

 「何というか、色々な人がいるんだな――しかし」
 クリスは気分良く、笑った。

   ・
   ・
   ・

「――概ね、そんなところかな?」
 二三、システム上の問題点と、シフトに関する議論を挟んだ後、ソフィが淹れてくれた焙じ茶の香りを楽しみながらクリスは他の面子を見渡した。
「だな。差し当たってはこんなところだろ」
 キリオは同じ焙じ茶の二杯目を手ずから注ぎながら答える。
「色々と問題やら提案やらはこれからも出てくると思うけど、都度、こうやって話し合えばいいじゃん」
 リンダはガムをクチャクチャと噛みながら言う。

 会議室内をどことなく、弛緩した空気が漂った。

「――あ、そうだ」
 思い出したようにクリスがその背中を伸ばした。
「ロードマンとその仲間達――なんだけどさ、当座は搭載機のメンテ作業を指示しておいたけど、何か君から仕事を与えてやってくれないか?」
「ん。っつうか、つい先刻、軽く話をしてきたが。なかなか、現場の貴重な意見が聞けてタメになった」
 焙じ茶を傾けながら、キリオは続ける。
「さっきのお前さんの『お願い』に関するプロジェクトに混ぜちゃって良いか?」
 クリスはゆっくりと頷いた。
「うん、頼むよ。意外と彼等は向いているかもしれないぞ。『畑』はちょっと違うけどね」
「――同感。遠慮無く扱き使わせてもらう」
 キリオが満面の笑みを浮かべた。
「ねえ、あの――フローラちゃんはどうすんの?」
 リンダが口を挟んできた。
「彼女には、別の仕事を与えるつもりだ。まあ、もうちょっと後の話になると思うけど」

   ・
   ・
   ・

「それじゃ、お開きにするか――」
 クリストファ・アレンとソフィ・ムラサメが立ち上がり掛けた。
「あ、ちょっと待って」
 リンダが彼等の退席を留めた。
「何?」
「ん――大したことじゃないんだけど、耳に入れておきたいことがあるの」
 クリスとソフィの背中を全く等しく、イヤーンな予感が迸(ほとばし)った。
「大したことじゃない――って、前もそう言っていたぢゃない…」
 ソフィ・ムラサメが情けない声を出した。
「ああ、ごめんよ。えっと――何から話すべきかなあ」
 リンダ・フュッセルは天井に目を向けて何かをブツブツと呟いている。どうも『大した』ことの様な予感を捨てきれずに、クリスとソフィは自席に再度、腰を降ろす。
「月面のラリーの処分場――まあ、アタシ達は廃棄抗って呼んでいたんだけどネ」
「はあ」
 適当な相槌を打ったのはクリスだった。リンダが何を言おうとしているのか、皆目見当も付かない。
「そこでとあるモノを見付けてさ」
「…ほう」
「ドサクサ紛れに積んでいるんだ、このアルティマに」
「……へえ」
「それがね、正体不明な代物でさ」
「………正体不明…」
 なんでそんなモノを積み込む気になったのだろう、この女史は。
「でもね、ハッキリしているのが――」
「…………ハッキリしているのが?」
 リンダの言葉を鸚鵡(おうむ)で返した。

「人型のね――兵器らしいのよ」



 小笠原の海が懐かしい。空の青さを溶かし込んだような、海の青。

 気の合う同僚達も大勢がいて、厳しくもそれなりに充実していた日々だった。

 訓練が終わった後に、海岸で缶ビールを傾けた時ほどの至福の一時はそうそう無いだろう。



「――おい、トリップするな、艦長!!」
 リンダのその大声でクリスは現実へと引き戻された。
「はっ――海は良いぞ…」
「――気持ちは分かる」
 キリオがクリスをフォローする発言を行った。
「なんでドイツもコイツもこの話を初めて聞いた時ってこうなるんだよっ!?」
 気分を害したリンダが円卓を両の掌で叩きながら足を踏み鳴らす。
「笑うか、トリップするかしか無いよ、そりゃあ」
 そんな呟きを放ったキリオに厳しい視線を注ぎながら、リンダは口を開いた。この件に関して、まだ口を開いていない人物を見付けたからだ。
「ソフィ、アンタもなの?」



 鶏肉には大蒜(にんにく)で香りを付けて、軽く黒胡椒を振っておきます。

 お好みでオリーブオイルに浸しておいた月桂樹の葉を乗せるのも素晴らしいですね。

 塩をまんべんなく振って、冷蔵庫に入れておきます。

 その間に熟したトマトを湯剥きしておくのが効率的です。



 律儀に上官に付き合っているのか、その精神を異次元へと飛ばしているソフィの表情を目の当たりにし、リンダ・フュッセルは心から泣きたくなった。
「もとい――ええと、リンダ。詳しく説明してくれ」
 現実に舞い戻ったクリストファ・アレンが湯呑みを脇にずらしながら整備服の襟ファスナーを開いた。微妙に息苦しさを覚えていたのである。
「うん。どうやらね、30余年ほど前に『建造』されたものらしいんだ」
 ヴィトンのバッグから光ディスクを取り出しながらリンダが言った。
「詳しいデータ――と言うか、何も分かっていないに等しいんだけど、取り敢えず現時点で判明している情報は全部、コレに詰まっているから時間がある時にでも眺めてやってちょー」
 クリスが開いてみると、ご丁寧に二枚のディスクが収納されていた。
「…君が分からないのだったら僕なんぞが見てどうこう出来るとも思えんが」
「まあ、だろけどさ――形式的なモノだから」
 悪気無くクリスの心を傷付けながら、リンダがその太い腕を卓上に乗せる。
「現物はいずれ、見せるとして――頭頂高…って表現が適切なのかどうかは微妙だけど――20メートル余り、ってところかな。胴体があって、頭があって、四肢が付いているからさあ」
 自分の体の各部を順繰りに指先で示しながら、リンダが説明した。
「――なるほど、聞いている限りでは『人型』のようだねぇ」
 ゲンナリとしたクリスと、自失しているソフィにその目を向けながら、リンダ・フュッセルは続けた。
「50余年前、ってのは推測に過ぎない。でも、胸部――この言い方もアレだけどしょうがないやね――の接合面に、【2749】とかって刻まれているんよね。で、まだ精密検査は行っていないから分かんないけど、多分、アレは『対消滅機関』を二基ばかり搭載している感じ」
 リンダは喉を湿らせるために、すっかりと温くなってしまった焙じ茶を飲み干した。
「ついしょうめつきかん――」
 クリスが機械的に繰り返したのも無理はない。対消滅機関は、断じて安価なものでは無い。このアルティマには【キッシンジャー式】の対消滅機関が標準装備されているが、それだって5基が装備されているだけだ。
 何が異常かというと、20メートル余りの機体――クリスは人型と言う言葉を考えることすら嫌だった――にそんな機関が二基も、搭載されていると言う点だ。リンダ・フュッセルの見立てが正しければ、の話ではあるが。
「――遊びで造ったとは思えないね」
 あまり認めたくはなかったが、それがクリストファ・アレンのこの時点での見解ではあった。
「だろ!?」
 湯呑みを片手に保持したまま、リンダが嬉しそうな顔を作った。
「いやあ、やっぱ艦長は分かってくれると思っていたよ〜」
「さっきと話が違うような――」
 クリスのそんな突っ込みを軽く流しながら、リンダは湯呑みを卓に叩き置いた。
「このアルティマですら、五基だ。これは、明らかに異常だよ。しかも30年前と言う仮定が正しいとすると、尚更だ――なっ、キリオ?」
 突然に発言を促されたヒムラ・キリオはその眼鏡を外して、ハンカチでレンズを磨き始めた。
「――それが事実だったら、どういう金で造られたのか、と言う問題点も浮上してくるよな――機関の単価だけでも、今の数倍はしていたと思うし。そもそもが、原付バイクに原子炉が二つ、乗っているようなものだからな…妙な比較になるけど」
 自分の息を吹きかけながら、脂汚れを落とすことに神経を集中させているキリオの発言であった。
「精密検査はまだ行っていない、って言ったよね――?」
 指を組んだまま、クリスがリンダにその目を向けた。
「ああ――解凍すら出来てないのが実状なんだ」
「解凍――って??」
 クリスは組んだ指の上に顎を乗せながら、尋ねてみた。もう、何が何やら。
「ベークライト――まあ、特殊凝固素剤――で、ガッチガッチに固められているんだよ」
「いよいよ以て怪しいねぇ」
 微量ではあるが、自分の胸中に好奇心が発生してきているのをクリスは自覚した。

 この世界に、無意味な物は何一つ存在し得ない――と言うのがクリスの持論でもある。原因、理由が須く介在し、『万物』は存在するはずだ。無意味な物、と言う決め付けそれ自体は、それこそ決めつける側のちっぽけな損得勘定を根底に据えた、一方的な価値観によるものでしかない。

 クリスは一つ、拍手(かしわで)を打った。
「興味が湧いた。見学をさせて貰おう――」
「突然だね、兄ちゃんはしかし――」
 興味を持って貰えるのは控え目に言っても『かなり』嬉しかったが、その変わり身の速さにはリンダは呆れに近いものを覚えてしまった。
「今は未だ『コンニャクゼリー』状のものでしか無いけど、それでも良かったら」
「もしかして、ベークライトのことか?」
「サー・イエッ・サー」
 四人は同時に立ち上がった。
posted by 光橋祐希 at 00:00| 【第八章】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2739年01月01日

第I光:『覚醒』 第八章 リーヌを渡って銀河を抜けて - II



「考えてみれば工房ブロックにまともに足を運ぶのは初めてのことだね」
 濃い四人組――と言うよりも四天王と表現するべきかもしれない――を珍妙な表情で観察している一団に軽く手を振りながら、クリスは自分の前で颯爽と風を切って邁進しているリンダの背中に声を投げた。
「――あ、そうか。言われてみればそうだよね」
 携帯端末を白衣の胸ポケットから取り出しながらリンダが軽く振り向いた。端末で、彼女はどこに連絡するつもりなのだろうか。
「――あ、サッチー? おう。今から艦長と副長、連れて行くからさ。例のブツ、コンテナの蓋を開けておいてくれよ――うん。今すぐ行くから」
 通信を切断しながら、無駄のない動作で端末をポケットに戻す。
「なんだ、サチコが詰めているのか?」
 キリオが訝しげな声を出す。
「うん。実はブツの掘り出し手順を練らせていたんだよ」
「用意が良いな――」
 後頭部をボリボリと掻きながらキリオが溜息とも苦笑とも付かない音を立てた。
「ついてはさっきの話なんだけど――」
 リンダ・フュッセルが突然、振り向いてきたのでクリスは驚いてしまった。先程から、この一団は歩く速度を一切、緩めていない。このリンダがピン・ヒールの装着でありながら良くもまあ、バランスも崩さずに早歩きを行えるものだ――等と、クリスは考えていたのである。有り体に言うと、ボーッとしていた。
「な、なんだい?」
「勿論、アタシ達もキリオの仕事は手伝うけど、噂のブツの解析やら何やらも平行して行ってみたいんだけど――駄目?」
 半ば、故意犯めいた輝きがその両目――後方のクリスからは片目しか見えなかったが――には灯されているように感じられる。
「どうせ、断られるなんて思っていないんだろう――」
 クリストファが苦笑いを混ぜながら肩を竦めてみせる。
「ご明察――勿論、どちらも手を抜いたりはしませんよ、艦長」
「そう願いたいね」
 ソフィがクスクスと笑い声を立てるのを聞きながら、クリスも半ば、渋渋と笑顔を構成せざるを得なかった。

 程なく一団は工房ブロック直通のエレベータ前に到着した。手慣れた動作でリンダがエレベータを即座に呼び付ける。
「遅いなあ――」
 リンダがそのヒールで小刻みに床を叩く。一分一秒でも惜しいかのように。
「――まあ、別に焦る必要もないだろう」
「いや、一刻も早く君達に見せたいのだよ、アレを――ぐふ、ぐふふふふふふふ」
 リンダ・フュッセルは多分、嗜虐に満ちた笑顔を作っているのではないか。そんな彼女の顔に目を向けた隣のキリオが半歩、身を引く動作を行ったことをクリスは見逃さなかった。
「と言うか、もう充分に驚いているから新鮮さはないと思うよ」
 クリスは整備服の両ポケットにそれぞれの手を突っ込みながら言った。それは、彼の全くの本心だった。
「――いや、驚くと思うぜ」
 応じたのはリンダでは無く、キリオだった。
「――俺はあの晩、まともに眠れなかったから。あ――あの晩ってのは初めて俺がそのブツを目の当たりにした夜のことだ」
 ヒムラ・キリオは目元をマッサージしながら自分の言葉に頷きを加えた。
「何というか――言い様の無い恐怖…いや、違うな…畏怖…を覚えた。本能的にな」
 そんなキリオの説明に満足したリンダだったが、彼女らしい言葉を投げ付けることは忘れなかった。
「――キリオってばさ、アン時。まともな言葉を喋れなくなっちゃったんだぜ」

   ・
   ・
   ・

「はいよー失礼――って、どしたのアンタ等――また、随分と濃ゆい面子じゃのう」
 ハンド・トレーラーと共にそんなエレベータから飛び出て来たのはフローラ・ザクソンであった。と言うか、何ですか――その柄の悪い口調は。
「それで遅かったんだなあ、来るのが――」
 先客がいればこそ、エレベータだって速やかに上がっては来られなかったのだろう。それでもそんなハンド・トレーラーの中身に興味を惹かれているリンダ・フュッセルは、トレーラーを物色しながら愚痴を放ったものだった。
「悪い悪い。物資搬入用が遠くてさ――横着しちゃった」
 フローラは舌を出しながら答えた。
「そらいいけどさ――で、ペイントなんて何に使うのさ?」
 トレーラから缶を一つ持ち上げて示しながらリンダが尋ねた。この二人も、数日前までは全く互いに面識もなかったはずだ――。溶け込んでいるようでなによりだ、と人知れずクリスはその胸を撫で下ろした。
ただ、この両者の会話だけを聞いていると、とても妙齢のご婦人方のそれとは思えないのには、複雑なものを覚えたりもしている。
「ああ。アタシの愛機になるワイヴァーンに簡単な塗装を行おうと思ってさ」
 いつの間にか、二人の間に割って入っていたクリスが二つ、三つとそんな塗料の種類を確認しながら呟いた。
「何色にするつもりなの――まさか」
 もう、返ってくる答えは分かり切っているが、それでもクリスは尋ねずにはいられない。クリスの右手にはモンザ・レッド――左手にはクリムゾン・レッド――トレーラの中にはそれこそレッドレッドレッドレッド。一面のレッド。特撮映画のヒーロー主人公が一個師団は軽く作れそうな種類のレッドだ。
「勿論、深紅に。どうよ?」
 ふっふーん、と得意気に胸を張るフローラ・ザクソン。
「……なんだか、機動力が三倍とかになりそうだな」
 そんなキリオの発言に、リンダとフローラが壁を叩きながら大笑いした。意味の分からないクリスとソフィだけが取り残されたが、後刻、キリオにその意味するところを教えて貰えたことは付け加えておこう。
「で、アンタ達はお揃いで何処に行くの――?」
 笑いをどうにか収めたフローラが誰にともなく、尋ねてきた。
「ああなんでもフガフガ」
 答えかけたクリスの口元が突然、塞がれた。誰の手かと思いきや、リンダ・フュッセルの左手だった。
「良いから黙ってて!」
「フガフガ(そんなこと言っても)」
 通常の軍艦であれば有り得ない、艦長に対するそんな行為にソフィは動揺を隠しきれないでいた。勿論、この艦は通常の軍艦ではもはや、無かった。
「いや、面白いモノを見せてやるからフローラもおいでよ」
 クリスは未だに開放してもらえずに、フガフガ言っている。実は、リンダの方が背が高かったりもする。
「――ナニナニ? なんか楽しいモノでもあるわけ?」
 フローラはすかさず、身を乗り出してきた。
「うん。楽しい。是非見て欲しいよ――ネッ、艦長――先入観無しで目の当たりにする人もいた方が面白いんじゃなくって?」
 口を押さえ付けられたままのクリスが頷くのを確認して、リンダはようやくその体を開放した。
「――そう言うことか――人が悪いね、リンダも」
 整備服の襟を正しながら、クリスが笑ってみせる。
「うわあ、なんだろう――俄然、楽しみになってきたよ」
 フローラが満面の笑みで、頷いた。

 工房ブロックはドーナツ構造となっている。中心部に吹き抜けがあり、その周囲に8階層からなる研究棟、生産ライン等が設けられているのである。
「無重力だったら、ここから『ダーッ』って一気に下まで飛べるんだけどな」
 工房ブロックへの立ち入りが初めてのクリスとソフィに対し、エレベータ付近の手摺り越しでその最深部を見せながらリンダは言った。
「今やったら大変なことになるね、こりゃ――」
 今、彼等が立っている場所からその吹き抜けの底部まで、ざっと40メートルだ、とクリスは目測した。
「チョークで痕を書きたくないから我慢しろ、クリス」
 キリオがその胸を上下させながら笑った。
「あまり美しくない死に方をするつもりはないさ」
 クリスは更に笑って見せたが、どうもブラックな会話になってしまった。
「――ま、ともかく降りようぜ。面倒くさいけど、さっきのエレベータは直通じゃないんだ」
 話題を変えるように、リンダが手を打ちながら言った。
「ブツは何処に?」
「最下層部。まあ、直ぐだよん」

 事実、三十秒も経たない内に彼等は最下層部の床を踏み締めていた。
「どれだ?」
 期待を隠そうともせず、クリスはリンダに詰め寄った。
「――まあ、まて。今から立ち上げるからさ」
 苦笑いを浮かべながらリンダが再度、携帯端末を取りだした。
「サッチー、ブツのコンテナ、立ち上げて!」
『了解でえす』
 なんと、そんな返答はスピーカーから流れてきた。自分の背後からの声に、クリスを始めとしてソフィ、フローラが一斉に振り向く。鈍い駆動音を立てながら、横臥していたコンテナがゆっくりとその角度を変えつつあった。恐らく、油圧ジャッキだろう。そんなジャッキの傍らに、一人の女性が立っていて、こちらに向けて手を振ってきた。恐らく、彼女がサチコ・スズキだろう。
「――相当重いんだな――」
 クリスはそんなサチコに手を振り返しながら、隣のソフィに呟いて見せた。
「そうですね――でも、ベークライト自体の重量もあるでしょうから」
「おっ、ソフィは艦長より冴えてるじゃーん」
 フローラが冷やかしてくる。
「そっか、そうだったな――失言でした」
 苦笑いをするクリストファ・アレンだった。

 その間にも、鈍い音を立てながらコンテナは迫り上がってくる。

 ヒムラ・キリオとリンダ・フュッセルが同時にその元へと歩き出したので、残された人間達も慌ててその背中に着いていった。

   ・
   ・
   ・

「こいつぁ――すごいな」
 最初に呟いたのはクリスだった。
「あは、あははははは――これ、絶対遊びでは造らないですよ――」
 ソフィが耳から魂が抜け掛かっている様な声を零す。彼女のそんな虚ろな笑い声をクリスは元より、全員が初めて耳にした。

 そして、全員が全員、フローラ・ザクソンの発言を期待していた。
「か――か――か――」
 フローラは拳を固く握りしめて体を震わせている。
「か――なんだい?」
 リンダが胸を張りながらフローラに言葉の続きを促した。

「かっちょえーーーー!!」

「すげすげすげすっげえええええええええええええ!!」
 フローラは両の親指を立てながら、その足を激しく断続的に床面に打ち付けた。
「It's a cool !!」
「だろだろだろだろ!?」
 望んでいた反応をこれ以上なく表明してくれたフローラ・ザクソンにリンダが顔をクシャクシャにする。
「GREEEEEEEEEEEEEAAAAAAAAAAAAT!!」
 半ば抱き合いながら絶叫を続ける二人組を遠巻きに眺めながら、クリスがキリオの袖を掴んだ。
「――お願い、止めて」
「無理だっての」

   ・
   ・
   ・

「確かに2749と言う数字が確認できるね――でも年代なのかね、これって」
 作業用クレーンで高みへと登ってその『人型』をベークライト越しに覗き込んだ。薄いオレンジ色のベークライトの中に閉じこめられているそれはまるで、琥珀の中に閉じこめられている昆虫を彷彿とさせる。
「これは――『有人』を前提としているんでしょうか?」
 ベークライトの表面を撫でながら、ソフィが呟いた。
「正直、分からないな。そもそもが、何を目的に建造されたのかも疑問だし」
 キリオが半ば、呆れながら言葉を発する。
「でもさ、バラバラも良いところじゃないか。所々、パーツが欠落しているように見えるんだけど」
 クリスが念入りに目を凝らしながら口にした。事実、人体で言えば肘、膝、首、肩の関節部にあたる部分が、存在しないのである。バラバラになった操り人形――そんな表情が適切だろう。
「いいところに気付くな、艦長――」
 感心しながら、キリオが言った。
「そうなんだ。俺もリンダも、それで悩んでいるんだ。チェックしたところ、数本のワイヤーで四肢各部は繋がれているようなんだが――」
 クリスが眉毛を顰(ひそ)める。
「ワイヤ? そんなチャチなもんで引き合いは取れないよな」
「その通り。装甲自体はFRP素材らしいんだけど――」
 いよいよクリスは驚きを禁じ得なくなってきた。
「硬化プラスティック――マジで?」
「ああ――本当に気持ち悪いよ。一体、何の為に、誰が――」
 キリオの言葉を聞きながら、クリスは『人型』の『顔』を見上げた。昆虫の触角を彷彿とさせる通信アンテナらしきもの。一際目を引く、どこか鶏のトサカを思わせる大きな角が一本。そして、自分を見下ろしている――様々なセンサーが凝縮されているのであろう、カメラ・アイ。どこか、三ツ目に見えなくもない。
「でも、綺麗な顔立ちをしていますね――何というか、ノビリティ(気品)を感じさせるというか」
 ソフィが指を組みながら、どこかうっとりと口にした。
「――そうだね、言われてみれば」
 クリスはその顔を観察し続けた。どうにも、目を離すことが出来なかったのである。

「おおい、早く変わってくれよう――」

 そんなフローラ・ザクソンの声が、クリストファ・アレンのそんな『人型』に対する不可解な執着から開放してくれた。作業クレーンは数人も乗れば窮屈になってしまうスペースしか存在しない。

「良いよ、キリオ――降ろしてくれ」

 何故か、心臓の鼓動が高まっているのを自覚しながら、クリスは言った。

   ・
   ・
   ・

 その一時間後、キリオとクリスはカフェテリアでビールを酌み交わしていた。
「なあ、キリオ――5、60年前にラリーで何かがあったりしたか?」
 枝豆を手に取って眺めながら、クリスは聞いた。
「――それは俺も考えて調べてみたんだ。だけど、取り立てて大きなニュースなんてありはしなかったな。まあ、表面では――だけどな。もう少し、裏を取ってみるさ。時間がある時にでも」
 キリオはジョッキの淵を指で撫でた。
「アレはどう控え目に考えても――ただの機体じゃ無いよ――まして、ラリーの廃棄抗だろ? リンダの言葉を信じれば――」
 言った後で、リンダのことを信用していないわけじゃない、と付け加えるのをクリスは忘れなかった。
「いや、俺も実際に廃棄抗でご対面したから、それは間違いない――」
 キリオはビールを含みながら答える。
「そんなラリーの廃棄抗に他のメーカーや――軍などの組織から『ブツ』が運び込まれるってことは?」
「まず、有り得ないな――まあ、軍から流れてくる可能性は多少はあるかもしれないが――それも考えにくいなあ」
 はあ、と二人は同時に溜息を吐いた。
「パーツはアレで全部だった?」
 クリスはジョッキを持ち上げた。大方、空になってきている。
「ああ、全部だった。リンダがあの周囲を全部漁ったらしいがね――他には見つからなかったらしい――でもなんでそんなことを?」
 キリオが腰を浮かして言った。二人分の新しいビールを持ってくる為だった。
「武器が――あるんじゃないか、って思ったのさ」
「武器――か」
 キリオは結局、座り直した。
「多分、アレは宇宙戦闘用に建造されたんじゃないか、って思う」
 クリスが腕を組みながら目を閉じた。
「――その根拠は?」
 恐る恐る、キリオは尋ね返した。何故、そんな感覚が伴っているのかは自分でも分からない。
「関節部だ。もしかして、欠落しているんじゃなくって――元々、そんなモノは存在しない、としたら?」
「――――!!」
 体が硬直した。素人とは言えないものの、畑違いの人間に指摘されるまでその可能性に思い至らなかった自分の浅はかさを思い知らされた瞬間だった。
「まあ、そんな宇宙空間でも、あんなワイヤじゃ引き合いは取れないと思うけどなあ」
 酔いを自覚し始めているクリスが悪い滑舌で言った。
「――ちょっと待て、なんか引っ掛かるな――元より存在しない関節部――外部推定には過ぎないが、二基の対消滅機関――」
 キリオは両の手で頭を抱えながら、呟き続けた。なんだ、妙に引っ掛かる――。
「すまん、ちょっと急用を思い出した!」
「ほえ?」
 ぼうっとしていたクリスが、対面に目を向けた時、既にキリオは立ち上がっていた。
「後で埋め合わせはする。すまん!」
 それこそ、風を巻き起こしながらヒムラ・キリオはカフェテリアから盛大に走り去った。

「おおい――」

 クリスの声が無人のカフェテリアを響いた。

   ・
   ・
   ・

「あ、艦長だ。一人で何を寂しく呑(ヤ)っているんですか?」
 キリオが立ち去ってからざっと十分後。壁際のTVに大昔の映画を流させ、酒を進めていたクリスに声を掛けてきたのは、ベアトリイチェとクローディアの二人だった。
 何か、油仕事を伴う作業でも行っていたのか、その作業服のアチコチに油染みが見える。
「いや、今までは一人ではなかったのだよ。君達の主任と呑んでいたんだが」
 クローディアが当たり前のように自分の前の席に座ってきたので、クリスはTVを閉じようとリモコンを手にした。彼女の本名はサカモト・クローディア。人種的傾向はアングロサクソンだろうか。どことなく、フローラ・ザクソンと似ている。
「何観ていたんです? ――あっ、この役者知ってる」
 そんなクローディアが目を細めながらTVに目を向けた。
「『七人の侍』だよ。僕、大昔の日本映画が好きでさ」
 クローディアがその手を叩いた。
「そうだそうだ。ミフネ・トシローだ!」
「ご明察――」
 そんな時、クリスが言葉を続けるのを遮るように、厨房の方から声が挙がってきた。ベアトリィチェ・ノイマンだ。
「クロウはビールで良いの?」
 ジョッキを用意しながら声を上げてきている。
「あ、ごめん。ビールで良いよ」
 TVから目を離したクローディアが慌ててベアトリィチェの元へと向かった。
「――艦長はお代わり、要りますか?」
 ベアトリイチェの言葉に、クリスは大きく頷いて見せた。酒量がオーバーかも分からないが、艦内の人間と出来る限りコミュニケーションを取っておきたいのが本音でもあったため、クリスは頷いたのだ。
「なんか手伝おうかあ?」
 TVを切断しながら声を上げたクリスだったが。
「それには及びませーん」
 と張りのある声が戻ってきたので、その言葉に甘えさせて貰うことにした。

「乾杯〜!!」
 三つのジョッキが等しい高さに掲げられ、次いで打ち鳴らされる。クローディアはその喉を激しく蠕動(ぜんどう)させながら、中身を三分の一方、一気に空けた。お見事。
「ぶへっへっへっへえ――労働の後の一杯は堪りませんなあ」
 そんなクローディアの想定外の発言に、クリスは含んだビールを噴出させそうになった。
「おいおい姉ちゃん――」
 ベアトリイチェが、自分達の対面の艦長を指差しながら同僚を窘(たしな)めた。クローディアの血色の良い顔が、瞬時に暗転した。
「す、すみません! つ、ついいつもの癖が――」
「いや、良いんじゃないの? フローラさんなんて、もっと激しいからさ」
 あまり、慰めにならないことをクリストファ・アレンは言った。

    ・
    ・
    ・

 艦載機格納庫で四人組を使役しながら愛機のペイントを行っていたフローラ・ザクソンのクシャミ。
 「ぶへっくしょーい――ん゛あー、コンチキショウ」
 誰か噂でもしているのかな。これだから、いい女は罪だっぺさ――。

 ちなみに、使役されている四人が共有した感覚はまた、ちょっと違う。曰く、
『なんてオヤジ臭い人なんだろう――』
 と。

    ・
    ・
    ・

「今まで何をやっていたの?」
 ベアトリイチェの持ってきてくれたチーズのラップを解きながら、クリスが尋ねた。
「ああ、ちょっと79番の粒子加速器の塩梅がイマイチだったので、チェックしていたんですよ――」
 クローディアがその両頬を朱に染めて言ってきた。どうやら、あまりアルコール耐性が強くないようだ。最初の呑みっぷりはクリスが『引く』ほどのものだったが。
「79番――」
 クリスは脳裏の艦内図を紐解いた。
「――ああ、工房ブロック付近か」
「凄いですね、そこまで知っていらっしゃるんですか?」
 ベアトリイチェがその胸を反らせて驚きを表現した。
「ま、ね。で、塩梅がイマイチってのは?」
 ブロック分けされたチーズの一つをフォークで突き刺して、クリスは口に運んだ。美味い。
「ええ、【ヤオ】の定期診断結果の中で、どうも出力に翳りが見える部分がありまして。調べてみたら79番への電力供給が若干、滞っていたんです」
 同じチーズをこちらは手ずから掴みながら、ベアトリイチェが説明する。今やクローディアは頬杖を付いたまま、ニコニコとしているだけだ。
「深刻なの?」
 そう尋ねながらも、そんなことはツユも感じていないクリストファ・アレン艦長だった。
「ま・さ・か」
 ベアトリィチェがコロコロと笑い声を立てた。
「全体の出力に関係はありませんよ。でもね、一応ソフィさんには連絡を入れておきました」
「なるほどね」
 答えながら、クリスはジョッキを空けた。四杯目なので、さすがに胃がダボダボだ。
「お代わり要ります?」
 ベアトリイチェが腰を上げ掛けるのを手で制しながら、
「いや――もう結構だ。と言うか、これ以上呑んだら明日の朝、起きられ無くなっちゃうよ」
 自分の当直はまだまだ先だが、充分な休息を摂る必要もある。『円卓会議』もあって、自分の自由時間はかなり制限されてしまうことになっていたのである。クリスはそろそろ、このささやかな酒席からの離脱のタイミングをそれとなく、図り始めた。
「ところれ、艦長って家族とかはいらっしゃらないんれすかあ?」
 クローディアが突然、自分の存在を表明してきた。ろれつが回っていない。
「ちょっと、いきなり失礼でしょ――すみませんね、艦長。この娘、酒が入るといつもこうで――」
 同僚を窘(たしな)め、上官(?)に頭を下げながら、ベアトリイチェが謝罪してきた。
「らって、るっと気になってたんらもん。アタシ達とおんなりなのからあ、っとかぁ」
 クローディアは机に頬をベッタリと付けながら、辿々しく主張した。
「家族ねえ――」
 もう少し呑むか、と、明朝の爽やかな寝起きを放棄したクリスだった。
「ちょっと、酒を補充してくる。待っててくれ」
 クリスは自分のジョッキを抱えて、厨房の方に体を向けた。
「にれちゃいやれすよう」
 ベチャリと潰れたまま、クローディアがそんなことを言ってくる。――意味が分からん。
「――?」
 訝しげな表情を浮かべるクリストファに、ベアトリイチェは即座に同時通訳を行うのだった。
「逃げちゃ嫌ですよ――って言ってます」
「逃げんがな」
 クリスは一つ大きく、笑った。

   ・
   ・
   ・

「――いずれ、皆にも伝えようとは思っていたんだけど」
 そう語り始めたクリスの左手にはショット・グラスが握られていた。中身はウィスキーで、丸い氷が一つ、浮かべられている。オン・ザ・ロックであった。
「君達と同じだ。僕も【アプレント】なんだよ」
 ベアトリイチェがその姿勢を正したように見えた。クローディアは相も変わらず、『たれクローディア』となっていた。人工重力に負けている存在だ。
「だから、家族もいない。君達と同じだよ」
 実は先日、ヒムラ・キリオと同じ会話を行っていたクリスではある。もっとも、そんな身の上話を互いに行っている余裕も無かったので、それっきりとなってしまっている。
「おんなりかあ」
 たれクローディアがその顔を上げた。テーブルに接着させていた頬部分が赤くなってしまっている。
「――おんなりら」
 クローディアの口調を真似て、クリストファは答えて見せた。当の本人はそれが理解できず、隣のベアトリイチェが苦笑している理由も分からない。
「この船に乗っているのはそんな人達ばっかりだよ――」
 クリスは視線を天井に泳がせながら言った。
「ソフィさんや、フローラさん達も?」
 幾分、残ったビールをちびちびと傾けながら、ベアトリイチェが尋ねてくる。その質問を行うのには、残ったビールと同じぐらいの勇気が必要だった。
「ああ。【アプレント】はスコットだけだけど。みんな、理由があって天涯孤独の身の上なんだ」
 静かな間が、三人だけのテーブルに降った。
「でもさ、こうしてみると面白いよな。誰だって血が繋がっているわけでもない、しかも、僕達は部外者もいいところだった。そんな状況でさ――」
 クリスはグラスを傾けた。氷が跳ねる音が小気味よく、響く。
「こうして一緒にいる」
 グラスを掲げ持ったまま、二人に向ける。
「そうね――とても、面白いことだと思います」
 ベアトリイチェがはにかみながら、呟いた。
「今の状況が僕はとっても好きだ。何というか――照れ臭いけどさ、大家族になっているんじゃないかな――って」
「それ、ステキれす――」
 クローディアが指を頻りに絡み合わせながら、どこかうっとりと口にした。
「――あるてま一家ってかんぢ」
 クリスとベアトリイチェは同時に苦笑した。
「なんだか、マフィアみたいだけどな、その響きは――」
 クリスの言葉に、ベアトリイチェが続く。
「ドン・クリストファ・アレンですか?」

「本当に悪そうだな、それって――」

 三人は机を叩きながら、盛大に笑い合うのだった。

    ・
    ・
    ・
 その荒涼とした胸中を何か、暖かいものが満たしてくる。なんだろう、この感覚は。

 自室に戻ってベッドへと潜り込みながら、クリストファ・アレンはその馴れない感覚、感情の正体の追求を試みた。

『ああ、僕は今、幸せなんだ――』

 その頭脳が、そう結論付けるのにはかなり時間が掛かった。

 馴れない幸福感にそれでも暖かみを覚えつつ、クリストファ・アレンは眠りに落ちた。




-----------------------------------------------------------------------------------
On Sun, 14 Sep 2809 07:49:38 +0200

標題:『アルティマの皆さんへ』


 改めまして、艦長のクリストファ・アレンです。

 本艦は現在、ネビュラ・リーヌへの突入に成功。アポロン星系到達まで、後170日を余すところとなっております。

 先立ってのヒムラ・キリオ、リンダ・フュッセル、そしてソフィ・ムラサメを交えた会議の中で、幾つか、こちら側で決定させて頂いたことに付いて報告をさせて頂きます。

 半ば、事後承諾となってしまっていることに関しては、誠に申し訳なく感じています。ですが、どうかどうか、協力を願いたいと考えております。不満点、或いは改善点などを思い付かれましたら、遠慮無くお申し出下さい。

 まず、第一に。

 諸君等の腕、才能を見込んでお願いがございます。

 詳細に関しましては後日、ヒムラ・キリオの方から連絡が行くかとは思いますが、この場においても少し、述べさせていただきたいと存じます。

 ・量産性に富んだ戦闘艦艇の設計
 ・それに伴う各種機関、火器の再設計
 ・航宙戦闘機ワイヴァーンを凌駕する性能を所有する航宙戦闘機の開発

 大まかに、この三点を要求、いや、お願いさせて頂きます。


 第二。これはちょっと、お願いとは異なりますが。

 我々がアポロン星系へと到着した際にどの様な事態が発生するか、推測の域を出てはおりません。ですが、楽観的観測は厳に戒めるべきかと考えます。

 その根拠について、述べさせていただきます。

・星系間通信衛星【カハヤ】(太陽系側)から、我々こそが『逆賊』である、と、我々の到着前に情報が送信される可能性があります。この場合、エテルナ側の出方にも依りますが、説得と潔白の証明にはかなりの労苦が伴うと考えられます。

・そもそも、エテルナ政府が我々を唯々諾々と受け入れるとは考えられません。どう言った行動に出るかは未明ですが、軍備完全廃止を政治上の理念として掲げている彼等が、絵に描いたような軍艦である本艦に対して、どの様な行動を取るか、疑問です。


 少々脅しが過ぎた感も否めませんが、楽観的観測は戒めるべきである、と再度主張させていただきます。基本的に、本艦それ自体の存在が我々の身の潔白を証明するものには充分成り得る、とは個人的には思いますが。

 ですが、相当な困難が立ちはだかるのは間違いないでしょう。


 ただ、これだけは忘れないで欲しい。

 私、クリストファ・アレンは本艦の艦長として認めていただきましたが、地位としても、そしてその精神の在り方としても、諸君等の高みに立つつもりは毛頭ありません。

 諸君等と私は、上下関係でなく、対等の関係で結ばれるべきだと強く感じております。

 昔ながらの言葉を引用させていただけば『同志』と言うことにでもなりましょうか。

 ですが、この船、【アルティマ】の長としては。

何があろうと、僕は本艦の長として君達を護る。それは、心から誓って。


 どうか、君達の力をこんな私に貸していただきたい。

心より、お願い申し上げます。


AD2808.09.14          クリストファ・アレン  拝

=================================================

Chricetopher_Allen ( cap_CA@ultimer_inner.sbs )

Abbreviated Dialing as: 00-001
=================================================



西暦2809年9月14日
艦長クリストファ・アレンより乗組員全員に送信された電子メールより

-----------------------------------------------------------------------------------
posted by 光橋祐希 at 00:00| 【第八章】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする